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雉白書屋 2026/10/16 公開 2026/10/16 11:00 更新
夜。とあるアパートの一室で、一人の男が夕食をとっていた。
薄汚れた畳に胡座をかき、ぼんやりとテレビを眺めながら箸を進めている。細かな傷がついた座卓の上には、茶碗やスーパーで買った惣菜が雑然と並んでいた。
やがて男は箸を置き、ふうと小さく息をついた。
「あ、これで最後だっけ……まあ、パスタのほうが好きだし、別にいいか」
『……おい、今なんと言った』
「えっ」
男は思わず声を漏らした。何気なく独りごちた直後、声が響いたのだ。テレビの音ではない。すぐ近くから、低く妙に威厳のある声がはっきりと聞こえた。
今のは確かに……。
呆然としながら、男はゆっくりと座卓の上に視線を落とした。
『そうだ。こっちを見るがいい。目を見て話そうではないか』
確かに声はそこから聞こえていた――ほぼ空になった茶碗の中から。
「……ははあ、つまり、あなたはお米の神様というわけですか」
茶碗にこびりついた米粒の一つが『うむ』と答えた。そう、紛れもなく米粒である。
話によると、なんでも一粒のお米には七人の神様が宿っているという。茶碗一杯分の米の数はおよそ三千粒。単純計算で、毎回およそ二万一千もの神が茶碗の中にひしめいていることになる。炊飯器の中なら、この男の場合およそ十七万。あるいはもっと多かったかもしれない。
その途方もない数を思い描いた瞬間、男はなんだか気分が悪くなった。
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