ヒューマンドラマ 短編

欲深い吾輩

癒されたい年頃 2026/11/03 公開 2026/11/03 12:10 更新

あらすじ

生まれた時から、人間どもに世話をされてきた一頭の馬。

食事は用意され、水も与えられ、身体の手入れまでしてもらえる。

今の暮らしに大きな不満はない。

ただ、柵の向こうに広がる景色を見るたび、ふと思う。

かつて吾輩たちにも、人間に頼らず生きていた時代があったらしい。

広い草原を自由に駆け、好きな草を選び、泥にまみれて暮らす野生の馬。

何も背負わず、何も乗せず、己の足だけでどこまでも走る――。

そんな暮らしを想像するのは、実に楽しい。

しかし、野生には敵もいる。

縄張り争いもある。

食事や水場を自分で探さなければならず、怪我をしても誰も手当てしてくれない。

自由を望みながら、安心も手放せない。

変化を求めながら、用意された食事もありがたい。

人間どもを乗せるのは悪くないが、何も乗せないほうが身体は軽い。

野生も欲しい。

世話もされたい。

自由も欲しい。

今の暮らしも捨てたくない。

「これを欲深いというのだろう」

そんなことを考えながら、吾輩は今日も柵の向こうへ想いを馳せる。

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