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渚月(なづき) 2026/03/23 公開 2026/03/23 12:19 更新
植木鉢が割れていた。
私が五年かけて育てた薬草の、あの鉢が。
王宮の裏庭に転がるその破片を見つけたのは、断罪の宣告を受けた翌日のことだった。
罪状は「魔導管理局の資材横領」。
身に覚えはない。
けれど弁明の場は与えられなかった。
公爵令嬢セレナが涙ながらに証言し、王太子が静かに頷いた。
それだけで、私の五年間は終わった。
(……五年。)
五年分の調整記録。五年分の巡回報告。五年分の、誰にも褒められなかった仕事。
それがひとつ残らず、「横領の証拠品」として没収された。
足元に散らばる土と根を見つめながら、私の指先はかすかに震えていた。
泣きたいのではない。
怒っているのでもない。
ただ、息が浅い。
私の名はリアナ。
この王宮の魔導管理局で、誰よりも長く働いてきた——元、主任。
踵を返す。
胸の奥で、何かが静かに組み替わる音がした。
前にも——こんなことがあった気がする。
違う場所で。違う名前で。同じように、居場所を奪われた。
あのときは、何もできなかった。
でも今は。
植木鉢は割れた。
けれど、根はまだ生きている。
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