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雉白書屋 2024/02/03 公開 2024/02/03 11:00 更新
「……ひっ、だ、だれ!」
その少女はひとり、森の中を彷徨い歩いていた。
夏休み。仕事で遠出するという父親に無理やりくっついてきたはよかったが、代わる代わる知らない大人に愛想を振りまき、そして父親の陰に隠れ、ひしっと父親のズボンを掴んで大人たちの呪文か暗号のような会話に耳を傾けることに飽き、ひとり森の中へ入ったのだ。
どこへ進み、どこで見上げても背の高い木々が少女を見下ろす。
空は曇天。じめじめと蒸し暑く、少女は手をパタパタ、ワンピースのスカートや胸の部分をパタパタ、ブゥンと虫が耳元を通過しバタバタ。泣きっ面に蚊。バチバチと腕を叩き、手のひらの血の玉を見て、卒倒しそうになるのを、ぐっと堪えるが、ガサガサと茂みが揺れれば短く悲鳴を上げ走り、立ち止まってはまた空を見上げ、と繰り返す。
「ねぇ……だれなの……?」
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