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ゆう猫 2026/07/12 公開 2026/08/05 19:00 更新
雨上がりの空の下に、その子は立っていた。
かわいらしい格好で、大きなギターを弾くその姿は、すごく綺麗だった。
人に気を遣い、ネガティブな気持ちに飲まれる私の視界は、灰色のフィルターに覆われている。
だけどその子は私に顔を近づけ、顎に手を添えて言ったのだ。
「綺麗な顔」
と――
甘い吐息が口元に掛かり、心臓が跳ねる。
だけど、同時に違和感を覚えた。
「え?」
彼女の口から出た声、それは女性とは思えないくらいに低い。
声変わりを果たした、低音の重厚感が極まったイケボ。
それが、目の前の美少女の喉から奏でられている。
「残念、男の子でした。がっかりした?」
悪戯っぽく笑い、小首を傾げる。
「ひゃ、ひゃぁあああああ!!」
情けない叫び声をあげ、そこから逃げ出す。
巧みにギターを操り、配信でも人気を得ているその子の名は……
空音結弦(そらおとゆづる)
そう、最強の『女装男子』だった。
私と違ってきらきらに輝いている彼は、なぜか私を褒めてくる。
同級生の朱里さんの影に隠れた私なんて、何も良い所はないのに。
更には歌っている所を聞かれ
「ぼくは優子ちゃんとライブしてみたいんだ」
と文化祭のステージに誘われてしまう。
陰キャな私が、そんな舞台に立てるわけがない。
だけど
「ぼく、優子ちゃんのいいところ百個以上言えるよ」
と力強く抱きしめてくる彼の男気に、私の心は少しずつ揺れ動いて――
好きなことに一生懸命な彼によって、私の灰色の世界は徐々に彩られていく。
雲間から覗く虹色。
結弦くんの笑顔は今日も明るく、私には眩しかった。
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