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東曌 2026/10/21 公開 2026/10/22 09:23 更新
シャオ・ウーエン、二十九歳。成都で中国古代史を研究する若き研究者には、二つの名前がある。
中国で暮らす彼を、人々はシャオ・ウーエンと呼ぶ。けれど、日本で生まれたとき、母の二階堂ユカリが名付けた名前は、二階堂遥歩(にかいどう・あゆむ)だった。
日本人の母と中国人の父。幼いころに両親が離婚し、母は日本へ、息子は中国へ。それぞれの人生を歩んできた。
文字は、言葉を記録し、人の名前を残す。では、記録されなかった人々は、歴史の中に存在しなかったのだろうか。
そんな問いを胸の奥に抱くウーエンのもとへ、ある夜、指導教授から一枚の画像が届く。そこに写っていたのは、出所の分からない甲骨文字の資料だった。
調べを進めるうち、彼は四川省の三星堆遺跡で発見された青銅仮面を思い出す。そして、亡き父が残した古い写真と、日本語の短いメモに気づく。
「正史に、問え。」
父は何を知っていたのか。母が語らない過去には、何があるのか。
二つの名前を持つ青年は、答えを求めて日本へ向かうことを決意する。
古代の文字と、失われた記録。そして、家族の歴史。
遠い過去をたどる旅は、やがて彼自身のルーツへとつながっていく。
「記録に残されたものだけが、歴史のすべてなのだろうか。」
これは、文字が伝える真実と、文字が語らない謎を追う歴史サスペンス。
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