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mickmick893 2026/11/01 公開 2026/11/01 21:10 更新
「どうも〜。タバコ、要りませんか?」
砲弾が降る塹壕に、自転車で乗り込んでくる、胡散臭い男がいる。
銃は持たない。魔法も使えない。
配るのは、この世界にまだない、紙巻きの煙草だけ。
死にに行く兵士の、最後の一服を、少しだけ長くするために。
前の世界で自転車屋だった男は、店の裏で一服したら、異世界の最前線にいた。
へらへらと笑う顔の下に、誰にも言えない後悔を隠して、今日も煙屋は塹壕を回る。
不味いと文句を言いながら、もう一本とねだる若い兵士。
煙草を毒だと怒鳴りながら、自分はこっそり吸っている治癒師。
そして、兵士の命を帳簿の数字で数える、本営の貴族たち。
一服しても、何も救われない。
それでも、煙を吐けば、人はもう一歩だけ前へ進める。
これは、戦場で銃の代わりに煙草を配った、ひとりの煙屋の物語。
※この作品は「カクヨム」にも掲載しています。
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