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平木明日香 2026/03/15 公開 2026/03/15 02:07 更新
帝国ヴェルゼナ。
多くの領邦と貴族家を連ねるこの国家では、華やかな社交と政治の駆け引きの裏で、人類と魔族の長い戦争が続いていた。
帝国でも名高い名門公爵家には、一人の令嬢がいた。
しかし彼女は幼いころから病弱で、外の世界をほとんど知らずに育つ。
やがて彼女は、その短い生涯を終えた――はずだった。
娘の死を受け入れられなかった父は、禁忌に近い決断を下す。
帝国の学者サカモト博士の研究を利用し、死んだばかりの少女の脳を、博士が生み出した未知の生命体へと移植するのだ。
それは、どんな姿にもなれる生命。
しかし「自分」という存在を理解できない、奇妙な生き物だった。
こうして生まれたのは、
人間でも魔族でもない、ひとつの存在。
公爵令嬢としての記憶を持ちながら、
形を持たない身体で目覚めたその少女は、再び帝国社会の中へ戻ることになる。
だが、帝国の貴族社会は優雅なだけの世界ではない。
婚姻は政治であり、令嬢は家門の象徴であり、
その一挙手一投足が、国家の力関係を静かに動かす。
さらに世界の外では、魔族との戦争が続き、
未知の生命を巡る研究もまた、密かに広がっていた。
「私は、誰なのか」
自分の形を持たない少女は、
帝国という巨大な秩序の中で、
自分という存在の意味を探し始める。
これは、
どんな姿にもなれる生命が、
ただ一つの「自分」を見つけるまでの物語。
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