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ヒロセカズヒ 2026/07/11 公開 2026/07/16 21:10 更新
第二次大戦の終わり、ソ連は北海道の北半分を占領した。以来、この島には国境線がある。荒野に延々と続く、有刺鉄線と監視塔の境界。その向こうは、ロシア領。
だが、国境の日常は、驚くほど平穏だ。スーパーには安いロシア産のカニと昆布が並び、人々は値札だけを見て籠に入れる。誰も、戦争など考えていない。
内閣官房北海道方面情報部の分析官・天童大雅の仕事は、退屈な総当たり調査だった。「本日もDMZは平穏なり」――そう日報に打ち込む日々。
ところがある日、農地の真ん中に、農業機械に偽装した装甲車を見つける。同じ頃、国境沿いでは、原因不明のドローン墜落が相次いでいた。局地的な気温上昇。不自然なソーラーパネル。そして、間宮海峡には――。
誰も撃たない。悪役も現れない。ただ、平穏な日常は糸となり、この国は静かに絡め取られていく。
これは、決戦なき戦争の話。気づいたときには、もう身動きが取れなくなっている、蜘蛛の巣のような、静かな侵略の記録である。
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