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あいだ ゆう 2025/02/07 公開 2025/02/24 10:33 更新
父が殺された。
父は王都でよろず相談所を開設していた。
父が殺された相談所では金品が盗まれてなかった。
相談所の記録をつけていたノートの一冊がなくなっていた。
父があつかった案件でAからZまであった。
それのSだけがなくなっていた。
父を殺した犯人が持ち去ったらしい。
おれは父のかたきを討つべく相談所を継いだ。
そのころ王都では妙な誘拐事件が起きていた。
最初に誘拐されたのはパン屋のオヤジだった。
パン屋のオヤジは覆面をした男ふたりに誘拐された。
オヤジは狭い部屋にとじこめられて一日中パンを焼かされた。
うまいパンを焼くまで家に帰さないとおどされた。
オヤジは一週間目にやっと納得させるパンが焼けた。
オヤジは目隠しをしてパン屋にもどされた。
日当として一日につき銀貨四枚をもらった。
盗られたものはなにもなかった。
危害もくわえられなかった。
家族に身代金を要求されてもいない。
一週間パンを焼かされつづけただけだった。
次の誘拐されたのは防具屋のオヤジだった。
やはり狭い部屋に監禁されてこわれた防具を修理させられた。
新品同然になるまでいくつも修理させられた。
なにも盗られずに虐待もされなかった。
身代金も要求されなかった。
防具を修理させられただけだった。
その次に誘拐されたのが宝石店のオヤジだった。
創業二百年の老舗で王都で最も歴史のある宝石店の店主だ。
誘拐犯は店主の前に大量のガラス粒の山を作った。
「このガラス粒の中に宝石がまざってる。その宝石をより分けろ」
ガラス粒は小麦くらいに小さかった。
店主は必死でガラス粒の中から宝石をより分けた。
十日かかった。
すべてを終えると誘拐犯がカネをくれた。
そのあと目隠しをして店に帰された。
それだけの事件だった。
店主は店の宝石が盗まれてないかチェックした。
なにひとつ盗まれてなかった。
宝石がにせものとすり替えられてないかも確認した。
ことごとく本物だった。
店主がおれに言った。
「気持ち悪いんですよ。なにも盗まれてない。店の宝石はすべて本物。なのになにか見落としがある。そんな気がして落ち着かないんですよ。それを指摘してほしくてここに来たんです。私がやつらになにをされたのか教えてください」
おれに誘拐犯の真の目的が指摘できるだろうか?
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