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榊志乃 2026/07/20 公開 2026/08/28 18:00 更新
現代――。
古くから、神々をその身に迎える「神卸(かみおろし)」を受け継いできた一族があった。
人々は神の力を借り、雨を願い、実りを祈り、土地の恵みとともに生きてきた。
その一方で、遥か昔。
神々から切り離された荒魂は、人の世を脅かすものとして各地へ封じられた。
長い時が流れ、荒魂はいつしか人々の記憶から遠ざかり、神卸もまた、一族に受け継がれる神事として静かに残るだけとなっていた。
――その封印が、再び綻び始めるまでは。
神卸の器として育てられた少女・瑞稀(みずき)は、父の教えに従い、自らの感情を表に出すことなく日々を送っていた。
しかしある日、帰宅途中で、封印されていたはずの荒魂と遭遇する。
幼なじみの旭が雷神の力で応戦するも、荒魂を倒すことはできない。
その時、瑞稀の耳元に神秘の声が響いた。
――迎えよ。
導かれるまま、瑞稀は初めて自らの意思で神を迎える。
「――謹んで、お迎えいたします。」
そこで瑞稀が知ったのは、荒魂が討つべき怪物ではなく、神から切り離された怒りや悲しみ、そのものだということだった。
傷ついた神々の声を聞き、その御魂をあるべき場所へ還していく瑞稀。
けれど、神をその身へ迎えるたび、彼女自身もまた、大切なものを少しずつ失っていく。
なぜ、長く保たれていた封印は崩れ始めたのか。
岩戸へ姿を隠した天照。
行方の分からない母。
そして、自分は何を望み、誰とともに歩きたいのか。
役目として生きてきた少女は、神々との出会いを通して、やがて自らの心で選ぶことを知っていく。
これは、荒ぶる神を討つ物語ではない。
怒りも、悲しみも、傷も抱えたまま――
失われた御魂を、もう一度ひとつへ還す巫女の物語。
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