歴史 完結・全34話

霧にさおさしあやかしつく夜

堅他不願 2026/02/17 公開 2026/03/05 10:56 更新

あらすじ

 主人公・龍左衛門は、品川の茶家見川(さけみがわ)に面した船宿・『鯉志(こいし)』で船頭を勤める粋な若者だ。

 彼の両親は、十年前(1774年)に茶家見川の洪水に巻きこまれ、そろって行方不明になっていた。

 かつて『茶家見川、二十五町(約2725メートル)に店百軒』とうたわれたこの川は、武州金沢藩(神奈川県横浜市)の申し立て……洪水ばかり起こしている……で一度埋めたてられた。それが、明和の大火(1772年)を境に防火帯としての価値が再認識され、ちょうど十年前に復活したという経緯を持っている。

 龍左衛門の両親が犠牲となったのは、皮肉にも、川を掘りかえす工事の終盤に起きた事故であった。

 そんな時に、龍左衛門は一人の河童と知りあった。両親の遺体が中々見つからなかった彼に、河童は船頭としての手ほどきを行い、新たな人生のきっかけをもたらした。

 両親の行方不明から、十年後(1784年)。

 初秋の黄昏時に、その日の仕事を終えた龍左衛門は、河童から相撲に誘われた。

 相撲の誘いを断った龍左衛門だが、土俵代わりに使っている廃神社に、若く美しい女性が住みついていると聞かされた。

 河童と別れて『鯉志』に戻った彼は、いつものように女将のおふみに労われ、店の看板をしまおうとした。

 その時、一人の客が舟を出してほしいと頼んで来た。武家の女性とすぐ分かる彼女は、河童が語っていた神社のそれで、かつて茶家見川の川舟改役を勤めていた櫛田家の娘であった。

 渋るおふみに対し、櫛田は、自分の生死を賭けた仇討ちが目的だと語った。というのも、彼女には恋人がいたのに、櫛田を置いて婿養子に出されてしまった。納得出来ない二人は駆け落ちを計画していたが、婿養子先にばれてしまい、手討ちにされてしまったのである。

 恋人の仇……桐塚 重斎(きりづか じゅうさい)は、武州金沢藩の末席家老。幕閣に働きかけ、茶家見川を埋めたて、そして掘り返させた張本人であった。

※カクヨムでも発表中。

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