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奔らない筆 2026/03/06 公開 2026/10/09 09:41 更新
【第二章連載中!】双つの月が空に浮かぶ世界。
人類はかつて、自らの内に秘めた力(マナ)を使い、争いの果てに強大な国家を築き上げていた。一方、人間の手の届かない絶対の秘境「ニザ大森林」では、夜の女神たちを信仰する種族たちが、大自然の力(オド)と調和する静かな暮らしを営んでいた。
ある夜、大陸の均衡を守っていたローベント王国が、裏切りと侵略の業火に沈む。
崩れ落ちる王宮の奥深く、美しい瞳を持つ側妃は、己の命を投げうって、一つの「祈り」を託した。
それは、生まれたばかりの我が子を、夜の女神が愛する深く暗い森へ逃がすこと。
血と炎の匂いが立ち込める人間の世界から、底知れぬ闇と精霊がざわめく神々の領域へ。
奇跡的に森へと辿り着いたその赤子――エルザは、人間社会において力の象徴とされる「マナ」を一切持たない者だった。だが、その深く澄んだ翡翠の瞳には、世界の真実を視透かす不思議な力が宿っていた。
十五年後。
己の正体も、滅びた国の血生臭い因果も知らぬまま、エルザは大森林の「巫女」として穏やかに育つ。
しかし、やがてエルザの瞳が十五年前の凄惨な真実を映し出した時、箱庭の平穏は終わりを告げる。
魔王も、勇者も存在しない。
これは、すべてを失った亡国の姫エルザが、夜の森の美しき隣人たちに愛され、やがてその「視える眼」で血塗られた人間の歴史と対峙していく、静かで壮大な物語――。
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