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熾星 2026/08/15 公開 2026/08/15 16:00 更新
元妻と結婚していた頃、俺たちには何年経っても子どもができなかった。
ところが、俺がさっきまで座っていた椅子に一度腰を下ろしただけの女が、なぜか妊娠した。
冗談みたいな話だ。だが三年前、俺は本当にそれが原因で最初の結婚を失い、気づけば別の女と結婚し、その腹の子の父親になっていた。
再婚して三年目。成長していく奏太を見るたび、胸の奥に引っかかるものが少しずつ大きくなっていた。眉も鼻筋も、笑ったときにわずかに上がる口元も、俺とはほとんど似ていない。
あの日の朝、俺は奏太を保育園へ送り届けたあと、忘れ物を取りにいったん家へ戻った。リビングの手前まで来たところで、中から莉奈の声が聞こえてきた。
「美奈って、ほんとすごいよね。あのとき、よくお腹の子を直人の子だなんて言えたよ。悠真の子をちゃんと育ててもらえて、奏太にはお金持ちのお父さんまでできたんだから」
少し間が空いた。
美奈が小さく笑う。
「むしろ感謝してほしいくらい。私は直人に、タダで父親になれる経験までさせてあげたんだから。それに、悠真先輩が幸せなら、私は何だってできるよ」
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