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小竹X 2026/05/29 公開 2026/08/09 07:01 更新
優秀な兄、美しい妹、その間に挟まれた私は、公爵家の長女リディア・ローウェン。十年かけて王太子妃になるための教育を受け、家の期待に応えることだけを自分の価値だと思ってきた。
けれど王妃の茶室で、王太子ユリウス殿下は私との婚約解消を告げる。隣には、噂の男爵令嬢ミリアがいた。王妃様は震える私を見ずに言う。「あなたの努力は認めています。けれど、それだけ」
屋敷に戻れば、父は当然のように妹フローラを次の婚約者にすると告げ、私には妹を支えろと言った。できないなら家を出ろ、と。
その夜、私は前世の夢を見る。硝子の塔で働く女たち。誰かの娘でも婚約者でもなく、自分の名で呼ばれ、笑っていた私。朝、涙は乾いていた。
王妃の座にも、公爵家の期待にも戻らない。私は荷をまとめ、母方の古い領地ミレイユへ向かった。雨漏りのする白楡館《しらにれかん》、凍えた子ども、放置された帳簿。そこで出会った隣領の伯爵セドリック様は、私を公爵家の長女とも元婚約者とも呼ばず、「リディア嬢は何を望むのです」と尋ねる。
私は初めて、自分の答えを探していいのだと思った。
一方、妹は礼法と政務に押し潰され、王太子は後ろ盾を失い、父からは帰れと手紙が届く。けれど私は、もう誰かの踏み台として生きない。
古い領地に火を灯し、人の名を取り戻しながら、私は私として愛される人生を選ぶ。
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