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カトラス 2025/08/06 公開 2025/08/15 21:59 更新
最初の本格的な拷問から、どれほどの時が過ぎたのか分からない。水牢の冷たい水は、膝まで満ちたまま変わらず、鎖の食い込む痛みも日常に溶け込んでしまった。けれど、心は確実に削り取られ、冷たい空洞になっていく。
あの日、私の歯はすべて抜かれた。自死を防ぐためだと笑いながら、長女イザベラは顎を乱暴に掴み、鉄の器具で一本ずつ歯を引き抜いていった。骨に響く鈍い痛み、鉄と血の味が口いっぱいに広がる。
「これで、もう舌も噛めないわね。死ぬことすら許されないのよ」
イザベラの冷酷な言葉が耳に残り、胸の奥で何かが凍り付いた。
その日を境に、三姉妹は姿を見せなくなった。代わりに現れるのは、夜ごと水牢に降りてくる醜悪な男たち。水音と靴音が階段を下りて近づくたび、冷たい恐怖が背骨を這い上がった。
「まだ生きてるな……」
「今日はどんな顔を見せるか楽しみだ」
湿った笑い声が闇を満たし、石壁に反響して幾重にも重なる。獣のような視線が肌にまとわりつき、鎖がわずかに震えるほど私は身を固くするしかなかった。
体を逃がす場所も、目を閉じて現実を拒む勇気もない。ただ、荒い息と水滴の音だけが世界を支配する。暗闇の中で響く靴音と、耳元に感じる湿った吐息。胸が張り裂けそうな恐怖に、喉の奥でかすかな声が漏れた。
「……やめて……」
その小さな声は、闇に呑まれて誰にも届かない。
やがて、男たちの足音も笑い声も途絶えた。水牢には水滴の音と、私の荒い呼吸だけが残る。闇は深く、世界は水と鎖と石しかなかった。
その孤独の中で、胸の奥に生まれたのは、冷たく重い感情だった。恐怖に凍えながらも、静かに膨れ上がるのは、すべてを沈めてやりたいという暗い願望だけ。かつての怯えは、やがて鋭い刃に変わり、私の心の奥底でひそやかに光を帯びた。
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