ポイント
日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。
読者の反応
- ブクマ
- 9
- 感想
- 0
- レビュー
- 0
- 評価者数
- 49
- 平均評価
- 8.12
- 週間読者
- 825
ブクマと評価ポイントの推移
日別の値
「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。
総合ランキングの推移
順位を読み込んでいます…
熾星 2026/10/12 公開 2026/10/12 14:17 更新
結婚を控えた旅行の三日目、俺は霧谷渓谷で蛇に噛まれた。
婚約者の朝倉奈緒と、彼女が長年面倒を見ている瀬川拓海。三人でキャンプに来ていた俺たちは、その日、山奥の滝を見に行く予定だった。
草の生い茂った遊歩道を歩いていると、右ふくらはぎに鋭い痛みが走った。足元から蛇が這い出し、茂みの奥へ消えていく。噛まれたあたりがみるみる腫れ、足首まで痺れ始めた。
「奈緒、マムシかもしれない! 救急車を呼んでくれ!」
奈緒が振り返ろうとした、そのときだった。少し離れた場所から拓海の悲鳴が上がった。
「奈緒さん! 今、蛇がこっちに来て……怖かった!」
奈緒は俺の横を通り過ぎ、拓海のもとへ駆け寄った。転んだ拍子に手のひらを擦りむいたらしく、拓海は情けない顔で傷を見せている。奈緒はその場にしゃがみ込み、救急ポーチを開けると、消毒用品とガーゼを取り出した。
俺は木の幹に手をついた。右脚の痺れが強くなり、立っているだけでもつらかった。
「奈緒、俺も噛まれたんだ。早く病院に行かないと」
彼女は一度だけ俺を見た。
「まだ立っていられるんでしょ? 先に拓海を連れて戻るね。直樹は体力あるんだから、少しなら大丈夫だよね?」
返事をする前に、奈緒は救急ポーチを肩に掛け、拓海を支えてキャンプ場のほうへ歩き始めた。
その背中を見ているうちに、高校時代のことが頭に浮かんだ。
バスケットボールで手首を骨折したとき、奈緒は泣きながら病院まで駆けつけてくれた。俺の包帯を巻いた腕を抱き締め、何があってもそばにいると言ってくれた。
二十年以上たった今も、あのときの顔は覚えている。
奈緒は、一度も振り返らなかった。
俺は遊歩道の脇に腰を下ろし、119番に電話した。途切れがちな電波の中で現在地と症状を伝え、指示されたとおり、なるべく右脚を動かさずに救助を待つ。
続いて、秘書の小野寺亮介に位置情報を送った。
「小野寺、霧谷渓谷で蛇に噛まれた。救急には連絡したから、搬送先の確認だけ手伝ってくれ」
通話を終え、もう一通メッセージを打った。
「それと、朝倉グループとの貸付契約を全部確認してほしい。婚約解消の手続きも進めてくれ」
送信してから、スマートフォンを膝の上に置いた。
奈緒と結婚する未来を、俺はずっと疑わずにいた。
だが、もう彼女を待つ理由はなかった。
日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。
「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。
順位を読み込んでいます…