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花守かおるこ 2026/05/20 公開 2026/05/20 21:07 更新
荒れ果てた最深部、
黒く濁る世界の底。
誰も近づかぬ死地へ、
ひとり捨てられた少年がいた。
名はアルト。
剣は弱く、魔法も使えず、
背負うのは仲間の荷物ばかり。
浴びせられるのは感謝ではなく、
「無能」という冷たい言葉だけ。
――だが。
積み上がった汚泥を見た瞬間、
彼の胸で何かが切れた。
「……散らかりすぎだろ」
それは怒り。
絶望より先に湧き上がった、
几帳面すぎる魂の叫び。
ひとつ拾う。
ひとつ磨く。
ひとつ整える。
すると止まっていた光が灯る。
死んだはずの遺跡が息を吹き返す。
濁った世界が、静かに脈動を始める。
誰も知らなかった。
彼の“整理整頓”こそが、
世界を支える神代の術だと。
仲間たちは失って初めて知る。
自分たちが見下していた少年こそ、
旅を、命を、未来を、
ずっと支えていたことを。
だがもう遅い。
彼はもう振り返らない。
罵声も、後悔も、懇願も、
埃を払うように置き去りにして。
世界の心臓部。
誰より居心地の良い静寂の中で、
今日も彼は箒を手に笑う。
「……やっぱり、片付いてると落ち着くな」
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