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ハル 2026/07/19 公開 2026/07/19 18:29 更新
国が滅びた夜、城門を内から開いたのは、味方のはずの宰相だった。
亡国リュミエールの第一王女ソフィアは、「戦利品」として敵国の若き皇帝ジークハルトに献上される。皇帝は触れた者を凍らせる呪いを受けており、これまで献上された三人は、御手に触れた瞬間に氷像と化した。満座の前で執り行われる、処刑同然の臣従の礼。だが、ソフィアの指先が触れると——凍るどころか、皇帝の霜のほうが退いた。
彼女には、自覚のない力があった。魔女の血統にひそかに受け継がれる「呪喰い」。呪いを喰べて、おいしく力に変える。
「夜ごとこの呪いを浄めるなら、望みを言え」
「……亡国の民を、保護してください」
こうして王女は、皇帝の秘密の浄化係になった。夜ごとの浄化と白湯の一杯、名簿の端の几帳面な注記、借りたままの上着。触れられぬまま独りだった氷の皇帝は少しずつ人の温度を取り戻し、契約は、いつしか義務ではなくなっていく。
やがてソフィアは、喰べた呪いの記憶から真実を視る。祖国を売った宰相、その糸を引いた帝国の闇。皇帝の呪いと王女の亡国が同じ男の仕事だと知った夜、敵国の皇帝と亡国の王女は、共犯者になった。
断罪の夜会で売国奴を裁き、千年の黒幕と対峙する。触れられない皇帝と呪いを喰べる王女の、溺愛と復讐と返り咲きの物語。
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