純文学 短編

#034『針の鳴る店で僕らは湯気を吸い込む』

いわたとおる 2026/10/14 公開 2026/10/14 19:00 更新

あらすじ

真鍮の針が跳ねるたび、湯気の向こうで本音が幾つも溢れ出す。

 夕暮れ時の定食屋「しおさい亭」。
 長谷部修平は、父の傍らでキャベツの千切りを刻みながら、日々を過ごしていた。
 カウンターの端に置かれた、マホガニーの木枠と真鍮のプレートを持つ奇妙な機械——人の動揺を検知して針が振れる「嘘発見器」。
 そこへ、疲弊したスーツ姿の幼馴染・大輔と、土まみれの金属缶を抱えた千里が現れる。
 再開発が迫る裏山から掘り起こされた缶を前に、彼らは熱い料理を口に運び、ぽつりぽつりと「いま」を語り始める。
 真鍮のプレートに手が置かれるたび、無情にも跳ね上がる黒い針。

 不器用な人々が温かいご飯と向き合い、自分自身の心と向き合っていく等身大の成長ストーリー。

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