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もしものべりすと 2026/10/12 公開 2026/10/12 03:54 更新
「見えなきゃ無いのと同じだ」
元請の所長にそう言われ、空調設備工・灰原透は今夜も黙って天井を閉じた。
逆勾配のドレン管。設計図を写しただけの嘘の竣工図。そのせいで足を折った老女と、責めを負って業界を去った後輩。
誰にも言えないまま、彼は五十一度の天井裏で命を落とす。
目を覚ましたのは、千年前に〈造り手〉が築いた結晶の天蓋に覆われた世界。
灰原が得た力は、空気の流れが色の線になって見える目——ただそれだけだった。
名前を持たない〈影働き〉の少女ネリ。記録院の書記エルナ。療院長ベルタ。
煙が逆流する家、菌の巣になった聖泉塔、戻り道を塞がれた病棟の炉。
灰原は腰袋の水平器とドライバーで、見えない場所をひとつずつ直していく。
だが、天蓋の亀裂を〈封〉で塞いで回る英雄・総監は、あの夜の所長だった。
そして亀裂の底には、どれも同じ「百分の一」の勾配がついていた。
あれは割れ目ではない。世界が息を吸うための口なのではないか——。
黙って直すことしか知らなかった職人が、世界の"竣工図"を描くまでの物語。
(全24話・完結済み)
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