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ぜろ 2025/11/25 公開 2026/09/16 16:30 更新
※この作品は性描写や残酷描写があります。苦手な方はご注意ください。
誰かは誰かの救いであり、絶望である。
生と死のあわいで、それでも生きようとした三人の物語。
主人公・志島哀流聖《しじま・あいるしょう》は、自分の名前を憎んでいる。
母の狂気めいた偏愛のもとで育ち、成長するにつれ「父に似ていく息子」に女として依存するようになった母の影から逃れられなくなった。一度歯車が狂うと落ちていくのは一瞬で、彼の日常は悪夢のように濁っていった。
十七歳で家を飛び出した哀流聖は、繁華街で拾われ、二十三歳になった今も夜の世界で“アルト”として生きている。
眠れば今も母の亡霊が現れる。塗りつぶすように、彼は毎夜女を抱き、虚無を消そうとし続けている。
そんな彼の前に、二人の“異端”が現れる。
一人は、歩道橋で虚ろな目をしていた家出少女・瀬奈《せな》。
身体を売り、一日をつなぐように生きている危うい少女。その無垢な笑顔に、哀流聖はかつての自分を重ねてしまう。
瀬奈はその日、死ぬつもりだった。だが、哀流聖だけは彼女の「死にたい」という気持ちを否定も説教もせず、普通の会話の温度で受け止めた。瀬奈は初めて、「もう少し生きてみてもいい」と思う。
さらに、哀流聖は瀬奈に、偶然知り合ったトランスジェンダーの青年・神羅《かむら》を紹介する。
アメリカンヴィンテージのオンラインショップを経営し、自分と同じく変わった名前を持つ神羅が、堂々と自分として生きている姿に、哀流聖は衝撃を受ける。
大人を信じられず、自分の存在理由を見出せなかった瀬奈も、そんな二人の姿を見て「こんな大人もいる」と初めて思い始める。
哀流聖は母の狂気に今も縛られ、
瀬奈は家庭で透明人間の扱われ希死念慮を抱き、
神羅は自分の存在を恥と断じた母に殺されかけた過去を持つ。
それぞれ傷を抱えた三人が夜の街で出会う物語。
互いの生き方に触れながら、ゆっくりと変わっていくーー。
絶望の底で交わった魂が、かすかな再生へと向かう。
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