異世界恋愛 連載中・全13話

私が辞めるまで二十年、王宮は整然と回っていました ~私が支度をやめた翌日から、きしみ始めます~

アクア 2026/08/22 公開 2026/09/06 14:07 更新

あらすじ

二十年、この王宮では何も起きませんでした。

火事も、飢えも、儀礼の失態も、隣国との諍いも。

何も起きなかったのは、私が先に済ませていたからです。

霜の降りが例年より二日早ければ、八の月のうちに薪を頼みます。十の月に頼めば、値は三倍、荷は十日遅れますから。

老侯爵さまの唇の色が変われば、喪の黒を染めさせます。黒は、染め上がるまでに二十日かかりますから。

王妃さまのお薬は、切れる十日前に南へ人をやります。船が、十日かかりますから。

私が知っているのは、明日のことではありません。〈間に合わなくなる日〉です。

私はエルスベート・フォン・アーレンツ。八つの年から祖母に連れられ、王宮の|支度方《したくがた》を二十年務めました。

済ませたことは、申し上げません。それが、この役目の作法でございますから。

ですから、婚約者である王太子殿下は、こうおっしゃいました。

「君は、何もしていないだろう」

「はい。何も起こさずに、済ませました」

私は役目を解かれ、支度をやめました。

翌日から、起きるはずだったことが、順番に起きております。

王宮が無能なのではありません。後任の方は有能で、起きたことには最速で手を打たれます。
ただ、起きる前に動くことだけが、どうしてもできない。二十年ぶん、先に見ていないからです。

私はいま、城下の〈梨の木亭〉におります。三月前に、私自身が押さえておいた宿でございます。

――ところで。

二十年、私は全員の必要を先に満たしてまいりました。
そのあいだ、誰ひとり、私のためには何も用意してくれませんでした。

その宿に、南の国の使節が泊まっております。

その方が、私が口に出すより先に、私のために何かを支度した、最初の人間でございます。

ポイント

総合ポイント 26
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 1869.2% ブクマ×2 830.8%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

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ブクマと評価ポイントの推移

10/26〜11/01(7日間)
ブクマ 4+0(7日間)
5 4 3 10/26 10/29 11/01
評価ポイント 18+0(7日間)
19 18 17 10/26 10/29 11/01

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
11/01 4 ±0 18 ±0
10/31 4 ±0 18 ±0
10/30 4 ±0 18 ±0
10/29 4 ±0 18 ±0
10/28 4 ±0 18 ±0
10/27 4 ±0 18 ±0
10/26 4 ±0 18 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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