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サトジュン 2026/02/25 公開 2026/10/18 19:07 更新
地方都市のはずれにある、少しだけ時代に取り残されたような商店街。
シャッターの増えた通り。
それでも朝になればパンの匂いが流れ、
昼には八百屋の呼び声が響き、
夕方には子どもたちの笑い声が転がっていく。
そこに住みついている一匹の野良猫がいる。
名前は――ガブ。
由来は、あくびをしていた顔が「がぶっ」と何かを食べそうだったから。
鋭そうな目つきとは裏腹に、動きはのんびり。
人に媚びず、かといって完全に離れもしない。
商店街という場所に、ふわりと溶け込んでいる存在。
ガブは飼い猫にはならない。
誰かのものにはならない。
けれど、商店街のみんなが、少しだけ「自分の猫」だと思っている。
魚屋の無口な店主。
跡取りに悩む和菓子屋の息子。
夫婦喧嘩の絶えない定食屋。
一人暮らしを始めたばかりの高校生。
毎日同じベンチに座るおばあちゃん。
大きな事件は起きない。
人生が劇的に変わることもない。
けれど、
雨の日に濡れた段ボールの匂い。
冬の朝の白い息。
夏の夜のぬるい風。
夕焼けに伸びる猫の影。
ガブはただ、そこにいる。
人の言葉は話さない。
慰めもしない。
助言もしない。
けれど、誰かが泣きそうなとき、
ふと足元に丸くなる。
誰かが笑ったとき、
少しだけ目を細める。
商店街の一年がめぐるたび、
小さな心の温度が、少しずつ変わっていく。
これは、
一匹の野良猫と、
ゆっくりと時間が流れる商店街の、
100の小さな物語。
読後、胸の奥に陽だまりが残る物語。
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