ヒューマンドラマ 短編

夫が私を愛していなかったと知って死んだ。十八歳に戻った私は、あの日の薔薇をもう渡さない

熾星 2026/10/20 公開 2026/10/20 14:59 更新

あらすじ

 死ぬ間際になって、ようやく分かった。

 私はずっと、一人の男を愛し続けてきた。けれどその人にとって、私は最後まで一番にはなれなかった。

 十八歳の春。高校を卒業したばかりの私は、十二本の赤い薔薇を抱えて朝倉颯真の前に立った。

「颯真、好きなの。友達としてじゃなくて」

 彼はしばらく私を見つめたあと、ひどくあっさり答えた。

「……じゃあ、付き合う?」

 あの頃の私は、その一言だけで世界中の幸せを手に入れた気になっていた。

 後になって振り返れば、あの日の「付き合う?」に恋愛感情がどれほど含まれていたのかは分からない。

 その夜、白石絢香は颯真の兄、朝倉雅臣からの告白を受け入れたばかりだった。颯真は長いあいだ絢香に想いを寄せていた。それでも彼女が選んだのは、兄のほうだった。

 そんな日に、自分を好きだと言う私が現れた。

 きっと彼は、差し出された手をつかんだだけだった。

 私はそれを、愛だと思い込んだ。

 その後、私たちは結婚した。

 長くそばにいれば、いつかちゃんと私を見てくれる。

 私が大切にすれば、そのぶん返してくれる。

 そんなふうに信じ続けた。

 けれど何年経っても、絢香は私より先にいた。

 彼女から電話が来れば、颯真は夜中でも車を出した。絢香が落ち込んでいると聞けば、私との約束を後回しにした。

 絢香が妊娠したときなど、夫である雅臣より颯真のほうが落ち着かないほどだった。

 その頃には、絢香と雅臣は結婚していた。

 出産が近づいたある日、雅臣は仕事で海外に足止めされていた。陣痛が始まった絢香から連絡を受けた颯真は病院へ向かい、家族用の待合スペースで朝まで付き添った。

 その夜、私も別の病院にいた。

 重い肺炎だった。

 長年の不眠とストレスでうつ状態が続き、身体もずいぶん弱っていたらしい。感染症はあっという間に悪化し、高熱で意識が途切れるほどになった。

 何度も颯真に電話した。

 けれど、一度もつながらなかった。

 彼が病院へ来た頃には、腕を上げることすらつらくなっていた。

 医師からは、感染の進行が早かったうえ、もともと体力が落ちていたことも悪化の一因だったらしいと聞かされた。

ポイント

総合ポイント 2,412
日間ポイント 16
日間ランクイン 5
最高順位 92
評価ポイント 2,27494.3% ブクマ×2 1385.7%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

ブクマ
69
感想
1
レビュー
0
評価者数
279
平均評価
8.15
週間読者
13,167

ブクマと評価ポイントの推移

10/25〜10/31(7日間)
ブクマ 69+16(7日間)
70 65 60 10/25 10/28 10/31
評価ポイント 2,274+554(7日間)
2,200 2,000 10/25 10/28 10/31

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
10/31 69 +1 2,274 +18
10/30 68 +3 2,256 +30
10/29 65 ±0 2,226 +96
10/28 65 +2 2,130 +52
10/27 63 +3 2,078 +80
10/26 60 +3 1,998 +82
10/25 57 +4 1,916 +196

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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