歴史 短編

   鏡の中の妖精       ――白銅鏡の秘密ーー

堀本廣 2018/09/06 公開 2018/09/06 08:53 更新

あらすじ

 平成17年9月、大森啓二(37歳)は養老ランド内の骨董品市場で白銅鏡を購入する。
その日から鏡の表面に浮いた白い錆の除去に没頭する。
 2年前に妻の雪江を亡くす。彼女の家は養老の滝の近く。彼女との結婚が縁で大森は度々養老に足を向けていた。
 毎日白銅鏡を丹念に磨いていると、古代の集落と思える光景が夢に現れて、その中で妻と会う事が出来た。
 しかし白銅鏡を完璧なまでに磨き終えた時、妻の夢を見る事がなくなった。代わりに大森の心は物の怪に憑依される。彼の形相は死人のようにすさまじいものになる。
 平成18年3月、大森は家を捨てて、養老山脈の北側にある笙ヶ岳に登る。その山頂にある洞窟に入る。大森はその中で死ぬ。
 死んだ大森は”あの世の世界”に入る。
その世界は白銅鏡に閉じ込められた瀬族の巫女、瀬織津姫の想念の世界であった。
大森はその世界で瀬織津姫に可愛がられる。白銅鏡をしっかりと守れと言い含められる。
 当初、瀬織津姫の想念の世界は穏やかで優しい田園地帯の光景だった。大森が入りこんでしばらくして、太陽も照らさぬ荒々しい世界へと変貌していく。
 そして瀬織津姫はもう1つの、雪江達のいる世界に侵入して、雪江達農耕民族の住民を破滅させようとしていた。
 この時、農耕民族の長、ニギハヤヒが大森の前に現れる。
大森が手に持つ白銅鏡を砕けという。
 大森の間の前には壊滅寸前の雪絵たちの姿があった。大森は意を決して白銅鏡を叩き割る。この時物質世界の笙ヶ岳の洞窟内の大森の死骸に抱かれた白銅鏡も割れる。
 そして瀬織津姫の想念の世界は消滅する。雪江達の世界も復元される。
この時を境に大森は養老町で唖として生まれ、30年後に雪江の住む世界に生まれ変わる。

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