推理 連載中・全2話

夜学寮怪筆始末

鰐淵 荒鷹 2026/10/30 公開 2026/10/31 22:45 更新

あらすじ

大正時代。

帝国随一の国立大学・帝星大学で文学を学ぶ柳井劉生は、生まれつき身体が弱く、古びた学生寮「夜学寮」で新たな学生生活を始める。

ある日、劉生は自室の文机から、前の住人が残した一冊の日記を見つける。

すでに書き終えられたはずの日記は、夜になるとひとりでに文字が書き加えられるという、奇妙な代物だった。

しかも、その記述を読むたびに、劉生の五感は不可思議な刺激を受ける。

見覚えのない光景が脳裏をよぎり、聞いたことのない声が耳の奥に響く。時には、そこに存在しないはずの匂いや、肌を撫でる冷たい感触さえ覚える。

それは幻覚なのか。それとも、日記に残された誰かの記憶なのか。

やがて帝星大学とその周辺では、不可解な事件が相次ぐようになる。

夜の辻で発見される惨殺死体。忽然と姿を消す学生。密室での怪死。食い違う証言。そして、誰も知るはずのない秘密。

劉生には、生まれつき一度五感で捉えたものを決して忘れないという、特異な記憶力があった。

日記がもたらす奇妙な感覚は、その記憶力と結びつき、何気なく見過ごしていた光景や、聞き流していた言葉を鮮明に呼び覚ましていく。

しかし、日記は事件の答えを教えてくれるわけではない。

呼び覚まされた感覚が何を意味するのか。そこに潜む違和感は何なのか。

断片的な手掛かりを結びつけ、証言の矛盾を見抜き、隠された真相を導き出すのは、文学を愛する劉生自身だった。

友人の医学生・犬飼守や、現場主義の警察署長・山村宗次郎らとともに事件を追ううち、劉生はいつしか奇怪な謎を解き明かす探偵となっていく。

だが、事件を解決するたび、日記には前の住人にまつわる新たな記述が現れる。

なぜ日記はひとりでに更新されるのか。

なぜ劉生の五感に干渉するのか。

前の住人は何を見聞きし、何を残そうとしたのか。

そして、劉生が日記を通じて感じているものは、果たして誰の記憶なのか。

帝星大学と夜学寮を舞台に、怪異と推理が交錯する。

これは、一冊の日記に五感を揺さぶられた病弱な文学青年が、自らの記憶と推理を武器に、過去から続く謎へ挑む大正怪奇探偵譚。

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