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歩行文庫 2026/10/30 公開 2026/10/30 08:23 更新
人間は、生きる理由を失うと死ぬ。
それは、この世界では誰もが知っている常識だった。
生きる理由を見失った人間を救うため、国は市役所の一角に「生存理由相談所」を設けた。そこでは専門の相談員が話を聞き、人々が生き続けるための理由を探す手助けをしている。
二十八歳の真島透は、仕事をし、食事をし、電車に乗る。特別な不幸があるわけでもない。明日を迎えることに、困っているわけでもない。
それでも、ある日ふと考えてしまった。
自分は、何のために生きているのだろう。
答えが見つからないまま、透は市役所の生存理由相談所を訪れる。
そこで出会った相談員の佐伯も、同僚の小野寺も、それぞれの生活を送りながら、何かを抱えて生きていた。誰かを大切に思うこと。明日を楽しみにすること。昨日と同じ仕事を、今日も終わらせること。
それらは、生きる理由と呼べるのだろうか。
探せば探すほど、透にはわからなくなっていく。
生きる理由があるから、人は生きるのか。
それとも、人は生きているから、理由を必要とするのか。
答えのない問いを抱えたまま、透の日常は続いていく。
これは、生きる意味を見つける物語ではない。
その意味がわからなくなった一人の人間が、それでも日々を過ごしていく物語である。
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