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雉白書屋 2024/09/20 公開 2024/09/20 11:00 更新
ある春の日、全人類が蛹になった。と言うと、少し語弊があるかもしれない。なぜなら、おれは蛹になっていないからだ。となると、もしかしたら他にも蛹になっていない人がいるかもしれないが、おれにはそれを確かめる術がない。インターネットは苦手で、定年退職してからのおれの世界はこの町だけで完結していた。スーパーや近所の商店、図書館、自宅。これだけで十分だと思っていたのだ。
今、そのおれの世界はすっかり静まり返っている。テレビはどの局も映らなくなり、駅まで歩いても誰一人いない。ただ、人間がいた唯一の証拠として、蛹が電柱のそばや車、店の中に点々とあるだけだ。蛹の色はそれぞれ異なり、白い壁のそばにあるものは白く、道路に横たわるものは灰色と、保護色になっている。大きさはドラム缶くらいで、形は少し枝豆に似ている。触ると少し硬かった。
長年連れ添った妻も、何も言わずに蛹になってしまった。いったいどうしてこんなことになったのか。人類の進化の一環なのだろうか。だとしたら、なぜおれは蛹にならないのだろう? 思い返しても、ただ一つ不自然だと感じたのは、普段食の細い妻がやたらとよく食べるようになったことくらいだ。
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