ローファンタジー 完結・全8話

芝の夜にひらく門

ねこねこキュー 2026/03/13 公開 2026/03/13 08:55 更新

あらすじ

東京の不動産開発会社に勤める桐山悠人は、再開発事業に携わりながら、古い街並みを壊していく仕事にどこか違和感を抱いていた。ある春の夜、仕事帰りに芝の増上寺を訪れた悠人は、境内の三解脱門をくぐった瞬間、不思議な感覚に包まれる。気がつくと、そこは江戸時代の増上寺だった。

困惑する悠人は、芝の町へ下り、団子屋の男や町人たちと出会う。やがて日本橋へ出ると、江戸の町の活気と人々の力強い生活に触れる。そこに現れた巫女は、悠人が「時の向こうから来た人」であることを見抜く。そしてその夜、江戸の空に火の手が上がる。後に歴史に名を残す「明暦の大火」であった。

火の粉が町を覆い、江戸は炎に包まれていく。火消しや町人たちは必死に町を守ろうとするが、火は止まらない。悠人は、都市とは完成されたものではなく、壊れ、再び作られながら続いていくものだと知る。炎の向こうに、未来の東京の光が重なり、江戸と東京という二つの都市が同じ場所に存在する瞬間を目撃する。

巫女は、町には人々の記憶によって守られる「魂」があると語る。江戸は消えるのではなく、やがて東京という名に姿を変えて続いていくのだという。巫女に導かれ、悠人は再び増上寺の門へ戻り、現代へ帰る。

数日後、悠人は再び増上寺を訪れる。授与所には一人の巫女が立っていた。江戸で出会った巫女と同じ目を持つその女性は、「町守」と書かれたお守りを差し出し、「町は続きます」と静かに告げる。悠人は、東京という都市の下に今も江戸が生き続けていることを知るのだった。

ポイント

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