純文学 短編

『駿府わくわく探偵団 〜お茶の香りと、黒はんぺんの謎〜』

百花繚乱 2026/01/13 公開 2026/01/13 18:55 更新

あらすじ

1. 乾杯のあとに、事件は起きる
「静岡ってさ、**“おいしいのに優しい”**んだよ」
そう言ったのは、私――紗也香(さやか)、二十七歳。東京で広告の仕事をしている。大きな案件を回して、締切に追われて、評価と数字に追われて、気づけば“楽しい”の輪郭が薄くなっていた。
だから今日、私は静岡に来た。
幼なじみの結衣(ゆい)が「一回、呼吸を取り戻しにおいで」と言ってくれたから。
静岡駅の改札を抜けた瞬間、私は思わず立ち止まった。
――空気が、柔らかい。
スピードに慣れた体が、勝手にギアを落とす。
鼻の奥に、ふわっと緑の香りが入ってきた。駅ビルのどこかの茶葉の匂い。甘いのに、すっきりしている。
「でしょ?」
隣で、結衣がにやりとした。笑うと目が三日月になる。昔から、私が固くなると、結衣は先に笑う。私の鎧を軽くしてくれるために。
「この匂いだけでストレス一割は落ちるから」
「数字、適当すぎ」
「体感だから正しい」
意味不明なのに、妙に納得してしまう。私はもう一度深呼吸して、胸の奥が少しだけほどけたのを感じた。
「で、今日の予定は?」
「えっとね。静岡市の“うまい・たのしい・ちょい歴史”を全部詰め込む」
「三日じゃ足りないやつじゃん」
「足りないけど、足りないのがいいの。次の理由になる」
結衣はそう言って、駅から少し歩いた細い路地に私を引っ張った。提灯が並び、湯気が踊る。黒い鍋がいくつも並び、鼻が勝手に“空腹”を思い出す。
青葉おでん街。
「まずは、静岡おでん。ここで乾杯しないと始まらない」
「いきなり重い儀式」
カウンターに座ると、大将が鍋をかき混ぜた。黒い出汁が照明に光り、串がぎっしり。大根、玉子、牛すじ、黒はんぺん――静岡の名物が整列している。
一口目の大根。
熱い。舌がびっくりする。けど、出汁が染みていて、しょっぱさの角がなくて、口の中が“あったかい”。
「……え、なにこれ。優しい」
私が言うと、結衣がドヤ顔で頷いた。
「でしょ。濃いのに、急がせない」
次に黒はんぺん。
噛むと、魚のうま味がじゅわっと広がって、鼻から抜ける香りが意外に爽やかだった。

ポイント

総合ポイント 34
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 2882.4% ブクマ×2 617.6%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

ブクマ
3
感想
4
レビュー
4
評価者数
3
平均評価
9.33
週間読者
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ブクマと評価ポイントの推移

10/24〜10/30(7日間)
ブクマ 3+0(7日間)
4 3 2 10/24 10/27 10/30
評価ポイント 28+0(7日間)
29 28 27 10/24 10/27 10/30

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
10/30 3 ±0 28 ±0
10/29 3 ±0 28 ±0
10/28 3 ±0 28 ±0
10/27 3 ±0 28 ±0
10/26 3 ±0 28 ±0
10/25 3 ±0 28 ±0
10/24 3 ±0 28 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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