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尾妻 和宥 2021/10/31 公開 2021/11/01 22:43 更新
村上は仕事で新宮市熊野川町を訪れているとき、川向こうに小さな集落があるのを眼にする。
聞けば、あれこそ百夜月(ももよづき)だという。消滅集落となって久しいが、かつてはロマンチックな悲恋伝説が残されていた。いくら男が恋焦がれても、月が邪魔して女に会えない話……。
小野小町と深草少将の百夜通いと酷似していることに気づいた村上。なんらかの形で伝播した異伝であろう。
胸に苦い記憶が甦った。
というのも6年前の京都。村上は『京中テレ』で売れっ子美人キャスター、中谷 董子にひと目惚れした。彼女をモノにしたくて、テレビ局で出待ちしたことがあるのだ。
せっかくいい関係になりかけたのに、董子は病気になって家に閉じこもり、離れ離れになってしまう。
村上も愛知の一宮に帰り、半年経ったころ、董子のことが忘れられず、会いに行こうと決意。
再会した彼女は人格が変わっていた。まるで小町のように、村上を試すのだった。
――「私の家に百日通えたら、君の女になってやってもいい。そうして君自身の信念も試してあげる」
このテストに挑まずにはいられない。一宮から京都山科の董子の自宅までは、直線距離で約96Km、最短ルートで約130km。バイクで通勤するにはいささか酷なゲームだった……。
※本作は黒森 冬炎様主催の『ライドオン・テイクオフ~移動企画~』参加作品です。
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