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本城オブリゲータ 2026/05/19 公開 2026/05/19 18:10 更新
「寒い辺境なんて嫌よ。傷のある方と暮らすなんて、わたくしには無理」
伯爵令嬢ミリアは、妹セリーナの代わりに、雪深い北の辺境伯グレイへ嫁ぐことになった。
家族は言う。
「お前なら我慢できるだろう」と。
だが、これは不正な入れ替わりではない。
正式な婚姻書にはミリアの名が記され、王都婚姻局にも花嫁変更届が提出された。
つまり、ミリアは「仮の妻」ではなく、最初から正式なノルヴァルト辺境伯夫人として嫁いだのだ。
寒い北の屋敷で、グレイは最初に告げる。
「嫌なら、離縁の道を用意する。だが、ここにいる間は客ではなく、私の妻として扱う」
実家で便利な娘として扱われてきたミリアは、初めて自分の意志を問われる。
不器用な夫。
厳しい冬。
実直な使用人たち。
雪に閉ざされた領地。
けれど、そこでミリアは知る。
自分が「地味」と言われてきた針仕事も、保存食の工夫も、子どもたちの冬靴を見る細やかさも、北ではちゃんと誰かの役に立つのだと。
やがて春。
ノルヴァルト辺境伯家の名声が王都に届くと、妹が現れる。
「やっぱり、わたくしが辺境伯夫人になるべきだったわ」
けれどミリアは、もう実家の便利な娘ではない。
「もう遅いわ。ここは、我慢している場所ではないもの」
これは、押しつけられた嫁ぎ先で、本当の家と夫を得る令嬢の物語。
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