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伊佐波瑞樹 2026/08/05 公開 2026/09/11 05:31 更新
スプリング公爵家――王国貴族筆頭に生まれた一人娘、フローラ・フォン・スプリング。
空色の髪と深い青い瞳を持つ彼女は、その美貌から「青の姫君」と呼ばれ、多くの貴族たちから憧れの存在として注目されていた。
しかし、美しかったのは容姿だけではない。
勉学、武術、魔法、領地経営、薬草学、裁縫、料理――あらゆる才能を持つ彼女は、十歳にしてすべてを極めてしまう。
あまりにも優秀すぎた。
騎士団長も、魔法師団長も歯が立たない。
娘の才能を誇っていた家族は、やがてその力を恐れ始める。
そしてある日、フローラは公爵領の果てにある森の一軒家へ送られた。
使用人もいない。
護衛もいない。
周囲には森しかない。
誰が見ても、生きて帰れるとは思えない場所だった。
――けれど、困ったのは森の方だった。
結界を張り、畑を耕し、魚を獲り、魔物を狩り、薬草を育てる。
規格外の才能を持つフローラは、誰にも頼ることなく快適な森暮らしを築き上げてしまう。
毎朝畑の様子を眺め、お茶を淹れ、季節の野菜を育てる。
そんな穏やかな毎日を送る彼女だったが、一つだけどうしても手に入らないものがあった。
それは――友達。
幼い頃から勉強と修行だけの日々を送り、友達は一人もいない。
恋愛経験もゼロ。
「友達って、契約書を書くの?」
そんな少しズレた天然令嬢のもとへ、ある日、森で迷った兄妹が現れる。
その出会いは、閉ざされていたフローラの世界を少しずつ変え始める。
一方その頃、王都では「青の姫君失踪事件」が王国を揺るがす大事件となり、騎士団や貴族たちは彼女の行方を必死に追い続けていた。
しかし当の本人は――
「今年のトマトは、とても甘く育ったわ」
今日ものんびり畑を耕し、美味しいお茶を淹れながら、静かな森で笑っている。
これは、"化け物"と恐れられた少女が、初めて「普通の幸せ」を知っていく物語。
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