ヒューマンドラマ 短編

離婚弁護士になって最初の依頼。被告は私の夫、原告はその「正妻」だった

熾星 2026/10/05 公開 2026/10/05 16:00 更新

あらすじ

 彰人と小さな結婚式を挙げてから、七年目の記念日だった。
 その日、私は同僚の森川奈緒から、急きょ一件の離婚相談を引き受けることになった。
「この奥さん、今年だけでもう十一回目。離婚したいって相談に来るたび、旦那さんまで追いかけてくるの。泣くわ、土下座するわ、プレゼントは持ってくるわで毎回大騒ぎ。結局いつも仲直りして帰っていくんだけど、こっちはそのたびに書類を作り直し」
 奈緒はうんざりした顔でファイルを差し出した。
「毎回きちんと相談料は払ってくれるし、今日だけ代わってくれない? 真琴たち、もう少し広い家に引っ越したいって言ってたでしょ」
 スマートフォンには、三十分ほど前に彰人から届いたメッセージが残っていた。
 急な仕事が入り、今夜は戻れそうにない。
 予約していた店も、すでにキャンセルしてある。
 せっかくの記念日がなくなったのなら、一件くらい仕事を増やしても同じだと思った。
「分かった」
 ファイルを受け取り、依頼人の欄を見る。
 久我美月――旧姓、西園寺。
 その下に、配偶者の名前があった。
 久我彰人。
 指が止まった。
 一緒に暮らして七年になる男と、まったく同じ名前だった。
 同姓同名なんて、珍しくてもあり得ない話じゃない。それに、私の知っている彰人は、人に頭を下げることさえ嫌うような男だった。
 以前、冗談めかしてこう言ったこともある。
「俺の人生に、誰かに跪いて許しを乞うなんて選択肢はないから」
 その彰人が、一年に十回以上も妻を追って法律事務所へ来るはずがない。
 相談票にざっと目を通す。
 婚姻期間は六年。
 子どもが二人。長男の理玖は八歳、長女の莉央は六歳。
 理玖については、婚姻前に彰人が認知済みと記載されていた。
 住所は澄川市瑞穂丘。
 そこまで読んでも、まだ自分とは無関係の「同姓同名の誰か」だと思っていた。
 私はファイルを閉じ、相談室のドアを開けた。
 そこで、足が止まった。
 仕事で遠方にいるはずの彰人が、床に膝をついていた。
 ジャケットは脇に放り出されている。普段ならネクタイが少し曲がっただけでも気にする男が、ソファに座った女の両手を握りしめていた。
「美月、本当に悪かった。もう一度だけ許してくれないか」
 女が答えるより先に、彰人が私に気づいた。
 取り入るような笑みが、そのまま固まった。

ポイント

総合ポイント 182
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 17294.5% ブクマ×2 105.5%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

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7.48
週間読者
373

ブクマと評価ポイントの推移

10/27〜11/02(7日間)
ブクマ 5+1(7日間)
6 5 4 3 10/27 10/30 11/02
評価ポイント 172+20(7日間)
170 160 10/27 10/30 11/02

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
11/02 5 ±0 172 ±0
11/01 5 ±0 172 +10
10/31 5 ±0 162 ±0
10/30 5 +1 162 ±0
10/29 4 ±0 162 ±0
10/28 4 ±0 162 +10
10/27 4 ±0 152 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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