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jh 2021/08/08 公開 2021/08/08 23:33 更新
松下あおいは仕事帰りに、前の職場で一緒だった武井に呼び止められて、一杯だけ付き合うことにした。武井はあおいにその会社を七年も前に辞めた香川瑠璃のことを訊いた。
その会社に在籍中、瑠璃は次々と男から言い寄られたが、誰に対してもまったく興味を示さなかった。武井の話では社内にはいまだに瑠璃のことを忘れられない男や、瑠璃に振られたショックで会社を辞めてしまった男もいるという。瑠璃は当時の知り合いとことごとく連絡を断ち、仲の良かったあおいとも三年前から音信不通になった。
よく一緒に食事に出かけて、あおいの部屋にも何度も泊まりに来た瑠璃だったが、あおいはイギリスに語学留学していたということと、実家が市川で商売をしていて羽振りが良いということ以外、瑠璃のことはほとんど知らなかった。
あおいは前の会社を辞めた後、偶然元同僚に会うたびに必ず瑠璃のことを訊かれた。瑠璃はほとんどの人間との連絡を断っているという。その話を瑠璃にすると、「私は死んだと伝えて」と返ってきた。そして三年前、あおいも瑠璃から連絡を断たれた。理由はまったくわからないが、その日が来ることの予感があり、驚きはなかった。
数日後、瑠璃は母の葬儀で斎場にいた。望んでいたはずの母の死は、彼女に虚しさをつきつけていた。
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