純文学 短編

おとこが作った甘い匂いのお粥

ほっこくのくわずいも 2019/11/16 公開 2019/11/16 09:25 更新

あらすじ

 豪商、大地主がお大尽なんて呼ばれて、そこの石畳を闊歩してた残り香が未だまだ漂って、午ひる下りになれば、お天道さんが傾くのとは逆に通りばかりか路地まで花街の色香が、ジトッと湧いて時分の話さ。初めて耳にしたときは、どこぞアタマの温あったかくなった女の拵えばなしだとみんな思ったね。
 家路へと歩き出すと、気配だけが二間と離れずに付いてくる。虫食いの明かりばかりの闇夜の道で、振り返らなくてもおとこの履き古して抜けた白いズボンから形の良いお尻が小気味よく左右に揺れているのは、わかっている。 
 翌朝、すぐに、そいつが鼻腔を擽ったくすぐったんだ。「お粥たいたから、食べようか」
 鍋の蓋を開けると、開けるまでじっと中に潜んでいた蜂蜜の匂いが白い湯気と一緒になって四角い部屋の天井までを一気に包み込む。既におとこが用意してくれた茶碗と汁椀それぞれが湯気で綿帽子かぶったみたいになってちゃぶ台に並んでいた。熱いだろうからと、持ちやすいほうの汁椀を渡され、箸を入れる間髪もいらぬまま汁をすするように粥は腹に落ちていく。一息でなく、ゆっくり長い時間がかかっているのに、息をつかぬ長いときが挟まっても苦しくなることはない。水の生き物が故郷の海に戻った安堵感に抱かれた静かさのまま、経っていく。こんなにも鼻腔は蜂蜜の匂いで蓋をされているのに、お椀の中には白い米粒より見当たるものはない。
「米と小鍋、勝手に使ったよ」
 三口で先に啜りすすり終えたおとこを見て、よくもこんなに熱いお粥を三口で啜れるものね、と思った。なにか言わなきゃと思ったが、一番に気になることに話が及ぶのが怖くて、二番目に気になることを聞いた。
「何が入ってるの、なんでこんな特別な味がするの」
 おとこはそれには答えず、女が食べ終わるまで待って鍋と二つの椀を洗い始める。
「いずれ分かるさ」水の音に紛れていたが、振り返らずにそう言った。 

ポイント

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日間ポイント 0
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日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

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評価ポイント 10+0(7日間)
11 10 9 10/31 11/03 11/06

日別の値

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11/05 0 ±0 10 ±0
11/04 0 ±0 10 ±0
11/03 0 ±0 10 ±0
11/02 0 ±0 10 ±0
11/01 0 ±0 10 ±0
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総合ランキングの推移

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