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蒼野湊 2026/07/03 公開 2026/09/18 18:00 更新
「大丈夫です、これくらい」。その一言を言い続けた彼女は、今月もう11回目の鎮痛剤を、ぬるいコーヒーで流し込んでいた。
会社の福利厚生ブースにやってきた鍼師・柊木透の目には、社員の心身の歪みが“黒い墨の霧”として視えている。
「ツボは動きますからね。あなたが自分を押し殺した場所に、今はツボが移っているんですよ」
細い鍼が、一本。それだけで、飲み込んだままだった本音が喉からほどけていく。
けれど、この会社の霧は濃すぎた。社員を鎮痛剤で使い潰す産業医。痛みを黙らせるだけの新薬を全社へ流し込もうとする製薬会社。透は怒鳴らないし、暴かない。ただ、一人ずつ「診て」いくだけだ。積み上がった見立てはやがて、会社という一人の患者そのものを動かし、薬に頼らせていた者たちの足元を静かに崩していく。
第2部では、駅前に「痛みゼロ外来」の白い看板が立つ。10分で痛みを消す椅子と、何百人という実績。透の前に立ちはだかるのは悪人ではない。本気で人を救っているつもりの男だ。そして、透がまだ誰にも話していない、恩師の最期の真相も。
第1部〈全36話〉完結済み。第2部〈第37〜72話〉も全話書き上げ済みで、毎日18時に更新しています。書き溜めがあるので、更新は止まりません。断れなかった彼女が自分の言葉で「それは、出来ません」と言えるようになるまでを、区切りまで一息に読めます。
――こんな方におすすめ
・薬でごまかしながら働いている(働いていた)方
・因果でじわりと効く「静かなざまぁ」が好きな方
・専門職の手つきと、救いのある読後感を求める方
※恋愛は淡い信頼のドラマとして進みます(ラブコメではありません)。鍼灸は雰囲気ではなく、見立て→一手→変化の順で描いています。現代ローファンタジー×お仕事ドラマ。
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