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jh 2022/09/09 公開 2022/10/12 21:24 更新
日曜日の朝、白衣を着た若い男が彷徨っていた。
彼の名は藤田佑(ふじたたすく)。前日の土曜日、患者の家族の横柄な態度にブチ切れ、さらに今までの鬱積した不満も爆発して、「こいつらを刺してやろう」と考えた。ところが血まみれの光景を想像した途端に恐ろしくなり、叫び声をあげて職場から逃げ出すと、錯乱状態のまま夜を越して横浜を歩いていた。
AMGを運転するいかにも羽振りの良さそうな男が佑の姿に気がついた。車を降りて佑に近づくと、男は、元介護士の伊庭進次郎(いばしんじろう)、ツイッターネーム「蜃気楼(しんきろう)」と名乗った。
伊庭は佑をファミレスに連れて行き話を聞くと、こう告げた。
「今の仕事を続けていると取り返しのつかないことになる。自分を大事にしろ。介護士の先輩としておまえを助けてやる。信用してもらって大丈夫だ」
伊庭は所有しているというポルシェやフェラーリの写真を佑に見せた。そして、ある女に連絡をいれて話をつけた。
伊庭の車で横浜駅西口に行くと、ポルシェ・カイエンに乗った黒づくめの女が佑の前に現れる。それまで尊大だった伊庭の態度が掌を返すかのように変わった。女は蓬莱(ほうらい)ゆき子と名乗り、伊庭から佑を引き取った。
「伊庭に頼まれたから仕方なく引き受けた。あなたには絶対に勝てる勝負をしてもらう。その勝負に勝ってあなたはお金を手にする。実際にあなたがやるのは事務作業だけ」佑を自宅へ連れて行く途中、ゆき子は簡潔に言った。
ゆき子と伊庭は、成功した個人投資家だった。
佑はゆき子の言いなりになるしかなく…。
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