ヒューマンドラマ 完結・全3話

コンチェルト(協奏曲)

イージーライター 2026/05/01 公開 2026/05/01 11:13 更新

あらすじ

広島県尾道市出身の井上さつきは、今年十九歳。多くの受賞歴を持つ気鋭のフルーティストである。かねてから往年のフルート奏者・古橋多恵子に師事していたが、今回晴れて『第1回全日本フルート・コンチェルト・コンペティション』のファイナリスト五人の中の一人に選抜された。その道程はしかし、平坦ではなかった。地元で理容室を営む父、井上六三郎の強い反対に遭っていたからである。「音楽ではメシは食えん」が口癖の父。それに猛然と抗議する母の美子。さつきの弟、大樹の口添えもあり、結局折れたのは六三郎だった。

一方、東京では同じく輝かしい受賞歴を持つ二十二歳の音大生・小森梓が本選へと進み、プロのフルート奏者・真行寺舞の指導のもと、日々、練習に励んでいた。梓の家は裕福であり、父親の小森健一、母親の小森咲恵ともに全面的に梓の音楽活動を支援していたが、それは表の顔であり、裏では健一の不倫、そして梓の弟である小森裕司と父親の間の不和が家族に暗い影を落としていた。ある夜、裕司は万引きの罪で警察に逮捕される。しかし、奇しくもそれがきっかけとなり父と息子は和解への道を模索することになるのだった。 

同じ頃、尾道では井上さつきが高校時代の元カレである山根真二と再会していた。真二はさつきに結婚を申し込み、地元に残るよう説得するが、さつきと師・古橋多恵子との固い絆、そしてさつきのフルートに対する情熱が最終的には真二への恋慕に勝り、さつきは再びコンペティションに向けて全霊を傾け、音楽の道を邁進することを選ぶ。 

家族との葛藤、そしてさまざまな思いを胸に、井上さつきと小森梓は本選でぶつかり合うことになるが、本選で本命視されているのは著名プロ奏者の桜河内莉子であり、次点としてオーケストラ奏者の大木達夫、そしてダークホースとして高校生で天才少女との前評判を持つ藤倉七海だった。
 
ヒートアップするコンペティション。下馬評に反して、中盤で優勢となったのは楽譜を見ずに演奏を完遂した藤倉七海であったが、それに触発されてさつきと梓も暗譜で本選に挑む。フルーティストの意地と未来を賭けた両者とも一歩も譲らない演奏。コンチェルト(協奏曲)の名に恥じないオーケストラとの融合と昇華に聴衆は感嘆し酔いしれるが、それはさつきと梓それぞれの家族との「協奏曲」でもあった。

ポイント

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