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他力本願寺 2026/07/18 公開 2026/07/25 12:00 更新
「最後に温かい食事を取ったのは、いつですか」
女魔王ネレイアの城へ送り込まれてきた新しい勇者は、三日間まともに食べていない十一歳の少女フィアだった。
自分の背丈ほどもある聖剣を引きずり、父親を助けるために魔王を倒そうとする少女へ、ネレイアが差し出したのは剣でも魔法でもない。
肉と根菜を煮込んだ、温かいスープだった。
しかも、フィアの父クラウスは用済みの証人として教会兵に刺され、魔王城近くの崖から捨てられていた。
ネレイアは父娘を救い、自分の城へ迎え入れる。
そこに暮らしていたのは、教会の記録では魔王と戦って死んだはずの六人の歴代勇者たち。
十歳で送られた少女は六十歳の医師に。
鍛冶師、商人、記録官、聖職者――帰れなかった子どもたちは、それぞれ傷と後悔を抱えた大人になっていた。
勇者を縛る刻印。
家族や故郷を人質にする副契約。
子どもの命を燃料にして王都を照らす聖灯炉。
そして、聖剣は子どもにしか使えないという五十年の嘘。
さらに教会は、次の勇者候補として百人の子どもを集め始める。
人間領では本来の一割も力を使えないネレイアは、傷の塞がらないクラウスと六人の元勇者を連れ、子どもを消費する制度そのものを終わらせるため王都へ向かう。
これは魔王が勇者を倒す物語ではない。
勇者という役目から子どもを取り戻し、彼らへ押しつけてきた責任を、大人たちが引き取る物語。
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