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ももや 2026/11/07 公開 2026/11/07 12:21 更新
気がつくと、会社員の直樹は白い空間にいた。目の前には「能力選択」の画面が浮かび、分厚いバインダーを抱えた新人らしい女神が、異世界転生のために能力を三つまで選ぶよう促す。並んでいるのは魔法や剣術ではなく、洞察力・繊細さ・鈍感力といった、人の性質ばかりだった。
能力を選ぶたびに、直樹の頭には失った記憶の断片がよみがえる。完璧な笑顔の奥で、目だけが笑っていなかった女性。その人の相手を勝手に決めようとする、低くきれいな声。扉の前で崩れ落ちた彼女に、自分は声さえかけなかった。
直樹は、楽に生きられる鈍感力ではなく、疲れやすいと止められた繊細さを選ぶ。そして転生をやめ、元の世界に戻りたいと告げる。消えていく女神の笑顔を見て、彼は彼女の名前を思い出す。「安奈」。
病院で目を覚ました直樹は、前と何も変わっていなかった。それでも震える指で、安奈に電話をかける。今度は、彼女の答えを待つために。
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