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星キノ 2025/07/03 公開 2025/07/03 22:48 更新
『ベティです。よろしくお願いします』
平民には下の名前が無い。自分の名前を言うだけの簡単な自己紹介をすると、彼女は完全無欠な笑みを浮かべ、薄い色素のしなやかな腕を私に差し伸ばした。
『デビーでいいわ。これからよろしくお願いしますね』
その奇跡のような見た目に私は嫉妬を通り越して感動すら覚えた。
そしてその日を境に私を取り巻く環境は激変した。新しい家の半分血のつながったお姉さまがくれたクマさんは、私の生涯の宝物となった。
やがてお姉様は王太子と婚約し、次々と政策を打ち出した事で賢妃と呼ばれ、王国は最盛期を迎えた。しかし私の長年抱いていた懸念が、悪夢が、徐々に輪郭を帯び始めて現実世界に顕現し始めたのは、まもなくのことだった。
『お前たちは今すぐ帝国に亡命する準備を始めろ。わしは……わしも連座で首が飛ぶかもしれん……その前にまずはお前たちだけでも逃げるんだ!!』
『待って、どういう事? 亡命?? 何を言って――』
そして私が絶望に打ちひしがれていたところに、更に追い打ちをかけられることとなった。
『死んでしまえ!』『この野郎!』
『アンタさえいなければ!』『恥を知れ!!』
どうして。
なんで。
『火を放て!』
そして燃え上がるような恋慕が私の身を焼く。ああ、神の如く尊くあらゆる宝石よりも美しい、私の唯一が、すぐそこにいるだなんて!
『ねえ、お姉さまーー王太子殿下って、さぞ素敵な御方なんでしょうね?』
これは、やがて欲しがり妹と姉に言われるようになった私が、本当に欲しいものを見つける物語。
それを手に入れるためなら、私は何でもする。たとえそれが私の身の破滅を招こうともーー
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