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月見 2026/09/06 公開 2026/10/11 02:22 更新
卑弥呼(ひみこ)が女王として君臨し、伊邪那岐(いざなぎ)や月読(つくよみ)といった“神々”が、まだ人として倭国を歩いていた三世紀。
そんな時代に、やがて仲間とともに東征を果たし、初代天皇となる一人の皇子がいた。
その名は、狭野(さの)。だが……
その始まりは英雄とはほど遠かった。
狭野は――泣き虫だった。
兄たちに「弱い」「役に立たない」と馬鹿にされ、山へ逃げて泣いていた狭野の前に現れたのは、七尺近い老いた大男。
老人は一本の木の実を土へ埋め、瞬く間に満開の桜を咲かせてみせる。
そして数週間後、その老人が連れてきたのは、少年のような姿をした一人の“神”だった。
その名は、伊邪那岐。
四百年以上を生き、かつて国を造り、邪馬台国――大倭壱国を治める女王・卑弥呼の父でもある伝説の人物。
だが今は政治から退き、子や孫たちを見守る隠居の身だった。
「私は伊邪那岐。君の先生をすることになったんだ」
こうして始まった、泣き虫皇子と神様の奇妙な共同生活。
武芸に優れた双子の竹と浦、生真面目な日臣、孤児の大久米、知恵者の椎根津彦。
狭野は仲間を増やし、田を耕し、文字を学び、恋を知り、やがて初めての戦へ向かう。
決して最強でも、誰より賢いわけでもない。
それでも狭野は、困っている者を見捨てられなかった。
やがて倭国では、西の大倭壱国と東の三輪山の均衡が崩れ、狭野――磐余彦(いわれひこ)にも東征の時が訪れる。
敗北や別れを経験しながら、それでも仲間とともに東へ進む磐余彦。
これは、泣き虫だった一人の皇子が仲間たちと歩み、やがて“初代天皇”となるまでの物語。
神代の終焉と、人の時代の始まりを描く古代日本建国譚。
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