異世界恋愛 完結・全70話

赤黒い髪が理由で虐げられていた侯爵令嬢は、聖女として国に仕えることにした。

あーちゃんぬ 2025/05/15 公開 2026/01/20 21:09 更新

あらすじ

人前で、笑顔を貼り付け十三年。
少しでも失敗を犯したら鞭で打たれ、最近は平手もおまけのようについている。
今はそんな鞭打ちのお時間。何回されても慣れないこの鞭打ちも、表面上美しい笑顔で耐えてみせる。

(何回やっても、慣れないわね……)

ルーリア・コキリ・セロライハラ。侯爵家の次女であるがメイドのような暮らしをしている。否、メイドより酷い暮らしをしている。
ワンピースに近い薄茶の埃まみれのドレス。埃を被った髪。その髪は血のように赤黒く、それが理由で家族に虐げられていると言っても良い。髪と同様、目も赤黒くて、まさに血塗れなのだ。瞳がルビーのようなんて、そんな綺麗なものではない。ルビーと呼ばれるものは透き通っていて、生き生きとした赤色の瞳のことを言うのだ。
ルーリアの瞳はそんな色ではない。
赤にはドス黒い黒色も混ざっていて、今にも死にそうな目をしている。髪も同じだ。埃を被って少しばかり見えないは見えないが、よく見れば直ぐに分かるということで。
そんなルーリアが鞭打ちの時間が過ぎて窓拭きをしている最中、母であるギュアカーラの聞いたことのないほどのご機嫌な声を聞き、ルーリアは怪訝そうに窓から門前を見る。すると、ギュアカーラの隣でメティーチェイアが上品なカーテシーを披露しているではないか。
その前には男性がいる。誰かしら。そう思ったのは少しの間。姉と母の自室があるこの廊下には、来ないのではないだろうか。
そう思い窓拭きを再開し鼻歌を歌っていた時、話し声が聞こえて横を振り返ると、あの三人がこちらへ来ているではないか。
ルーリアはバケツとタオルを置いて曲がり角まで逃げた。


男性と姉、母は姉の自室へ入り、それで良いのかと思いつつもルーリアは僅かに開いている扉の間から覗く。

 姉がその男性の正体を明かす。

「そうですわ、皇太子殿下」
「っ!」
(こ、皇太子殿下っ⁉︎)

 ロドレーム・ココノア・フィンシーカ皇太子。
 そんな彼がお暇しようと扉を開けると、そこには逃げ遅れたルーリアの姿が。
 彼は目を大きくさせて、固まる。
 ルーリアは笑顔になってカーテシーをした。

 自分を保ち、恐怖も何も悟られずに。
 だから、ロドレームが頬を薄ら染めていることも知らなかった。

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