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セルヴォア 2026/04/24 公開 2026/05/06 00:21 更新
誰もが口にするが、誰も本人を見たことがない。
「不滅の灯守」——帝国の建国以来、ずっと同じ一人として語り継がれる影。絶体絶命の戦場を一夜で覆し、遠く離れた複数の宙域の戦況を同時に動かす。その存在を見た者はなく、姿を知る者もいない。神話か、虚像か、それとも本当に存在する何者かがいるのか。困り果てた艦乗りたちは今日も呟く。「灯守ならどうする」と。
星間戦争が続く時代。発光性の資源、星灯素が世界のすべてを動かしていた。艦隊の燃料、都市の灯り、人々が生きるために必要な医療補助具まで、この資源なしに星の海では誰も生きられない。それを独占しようとする者と、その流れを変えようとする者たちの大戦争が、今日も宙域を焦がしている。国家が争い、財閥が暗躍し、宗教が正義を語る。そのはざまで、無数の人間が生きている。
そんな戦場の片隅に、リオ・メルクはいた。
帝国の新米分析官。生活のために軍へ入り、艦橋の隅の解析卓で数字と向き合う若者だ。先天的な身体制約を抱え、身体補助具なしには長く立てない身体で、それでも毎日前へ進もうとしている。制度の壁に何度も跳ね返されながら、それでも諦めない。戦艦を指揮する英雄でも、勲章を持つ将校でもない。ただ、自分にできることをやり続ける。証明できないことを抱えたまま、それでも前へ出ようとする人間だ。
しかし、その「できること」が、誰も気づいていない形で、少しずつ戦況を変えていく。
大艦隊が星の海で火を噴き、機動戦艦が展開し、星灯素の光が宙域を満たす。その戦場を解析卓から読み続けるリオの傍らには、いつも誰かがいた。親友がいて、婚約者がいて、艦の仲間がいる。支えられながら生きることを、この物語は敗北とは呼ばない。人の価値は、できないことの数では決まらないと、人は支えられてよく、支え返してよいと、この物語は語る。そして支えが無数に重なった先に、何が生まれるのかを。
宇宙戦艦の砲撃、星間政治の謀略、制度の壁と人の温かさ。そして、誰も知らない場所で、遠い誰かがリオの名前を追い始める。一人の英雄が星を救う物語ではない。
英雄は星を救わない —— ならば、星を救うのは誰なのか。
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