ヒューマンドラマ 短編

義母は私に「お母さん」と呼ばせないのに、夫の幼なじみにはそう呼ばせていた

熾星 2026/10/28 公開 2026/10/28 17:14 更新

あらすじ

 十五夜の晩、夫の圭介と幼なじみの七海は、今年も私を巻き込んで月見団子のゲームを始めた。

 団子の中に硬貨を一枚隠し、それを食べた人は一人でホテルに泊まる。そんなくだらない遊びだ。

 結婚して四年。毎年、その役を押しつけられるのは私だった。

 今年も、硬貨が歯に当たった。鈍い痛みに顔をしかめると、ソファに座った七海が楽しそうに笑った。

「莉央って、こういうとき運がないよね。今年もホテル?」

 圭介は七海の隣で、面白がるように口を挟んだ。

「悪いけど、今夜はホテルで過ごしてくれ。俺は七海と月を見たいんだ」

 私は唇を噛んだ。三歳のときに両親を事故で亡くし、親戚の家を転々として育ったことも、圭介は知っている。結婚してから私が望んでいたのは、ただ自分の帰る場所を持つことだった。節目の日には家族と食卓を囲み、何気ない話をしながら過ごしたかった。

 それなのに、このゲームを嫌がるたび、圭介は不機嫌になった。

「ただの遊びだろ。そんなに怒ることか?」

 今年、私は言い返さず、荷物をまとめて家を出た。

 マンションの下まで来たところで、寝室に妊娠の検査結果を置き忘れたことに気づいた。取りに戻り、玄関の前まで来ると、室内から義母の澄江の声が聞こえた。

「七海は気が利くわね。うちの家族にぴったりだわ。圭介には最初から、莉央なんかと結婚する必要はないって言っていたのよ。親もいない子が、うちの嫁にふさわしいわけないでしょう?」

 圭介は気のない声で答えた。

「母さん、心配しなくていいよ。こうして外に出ていったんだから」

 七海がくすくす笑った。

「毎年、硬貨入りの団子を莉央に渡してるのに、本人は自分が運の悪い人間だと思ってるんだもんね」

 三人の笑い声が、扉越しに聞こえた。

 私はスマートフォンを取り出し、病院に電話をかけた。妊娠週数を伝え、中絶について相談したいと告げる。診察の予約を済ませると、圭介に送るはずだったメッセージを消した。

 圭介には、私より一緒にいたい相手がいる。

 だったら、私がこの結婚にしがみつく理由もない。

ポイント

総合ポイント 620
日間ポイント 150
日間ランクイン 2
最高順位 159
評価ポイント 58894.8% ブクマ×2 325.2%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

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7.35
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ブクマと評価ポイントの推移

10/29〜10/31(3日間)
ブクマ 16+12(3日間)
15 10 10/29 10/30 10/31
評価ポイント 588+520(3日間)
600 400 10/29 10/30 10/31

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
10/31 16 +1 588 +142
10/30 15 +7 446 +150
10/29 8 +4 296 +228

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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