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空館ソウ 2021/07/18 公開 2021/08/03 17:19 更新
「イェェェ――――――――――イッ!! 次元魔法の杖、修理完了!」
物語は戦う事しか能が無いライアン伯爵家、その長女ヴィータの雄叫びから始まる。
ヴィータはかつて魔導卿とまで称された曾祖父が残した次元魔法の杖を修理し、異界に転移する手段を得たのだ。
その目的はただ一つ。異界の品で公爵家に貢献し、派閥の力で侯爵夫人の座を射止める事。
彼女には復讐すべき相手がいた。
「脳筋サラブレッドのもらい手なんてオーガーくらいかしらぁ」
夜会にて、ライバル派閥トップのシャーロット侯爵令嬢に面と向かって侮辱されたのだ。さらに自分の派閥トップであるアンナからまで脳筋牝馬という二つ名までいただいてしまい、ヴィータの婚活は暗礁に乗り上げたのだった。
「絶対見返す、侯爵夫人になってシャーロットと対等になってやる!」
絶望的な戦いに身を投じるヴィータ。
ついでにいえば戦争がなくなったせいでライアン家自体も存亡の危機。
異世界に渡る事はヴィータにとって、起死回生の一手になる。
そして扉は開かれた。
「僕の名前は陣内・善左衛門・末那だ。家名がジンナイ、当主や嫡男が名乗る名がゼンザエモン、個人名がマナだ。善左衛門と呼んでくれ。この部屋を親戚から借りて住んでいる。よろしく」
何事にも動じない、日本の大学院生の部屋のクローゼットの中に。
これは脳筋牝馬と呼ばれる残念な伯爵令嬢が日本の寡黙万能イケメン大学院生と共に異世界で無謀な婚活に挑む物語。
「助けてゼンザエモン!」
……あるいは、そんな叫び声がしばしば聞こえる日常の物語である。
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