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山下 宏之 2025/06/17 公開 2025/06/17 00:37 更新
――宇宙は、あまりに静かで、残酷だった。
人類が宇宙へと版図を広げ、無数のコロニーが群雄割拠する時代。
戦争は地上から宇宙へと舞台を移し、いまや人と機械、思想と愛が交差する闘争の只中にあった。
その戦争のさなか、ひとつの“兵器”が生まれる。
ナノマシン集合体によって構成された、完璧な偵察用ドール。
その外見は――17歳の少女。肌は白磁のように滑らかで、表情はどこか神秘的だった。
敵対勢力の高官が、亡き娘の姿を模して密かに作らせたそのドールは、
やがて戦場で「兵器」として改造され、何のためらいもなく人を殺す存在となった。
連合側の戦闘機パイロット、アカシ・レン。
戦闘よりも観察を好む孤独な青年は、戦場で何度も“彼女”と遭遇する。
敵にも味方にも捕捉されず、ただ宇宙を舞うように飛翔するその少女に、彼は魅せられてゆく。
そして、密かに名をつけた――「シオン」と。
だが、レンの開発した追尾装置が軍の目に留まり、ドールを追う兵器が完成する。
シオンたちドールは、次々と破壊されていく。
そしてある戦闘で、レンは錯乱し、僚機を撃墜。
すべてを投げ打ち、彼は宇宙服のまま戦闘機を放棄し、漂う“彼女”をその腕に抱いた。
もう笑わない彼女にレンは名前を呼びかける。
シオンが目を開けた時、レンは既に生き絶えていた。
それでも、彼女は確かに感じていた。
名前をくれた、彼のことを。
そして、沈黙の宇宙に現れる巨大船。
それは、新たな物語の始まりか、それとも終焉か――
これは、
名もなき兵器が“人”になるまでの、
記録なき物語
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