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ねこまねどり 2025/08/20 公開 2025/12/31 21:00 更新
「……あの島のことを、ちゃんと話しておきたいの」
母からの電話を、歌帆は最後まで聞かなかった。
恋人との約束を優先したその一週間後、母は突然亡くなってしまう。
母の遺骨を父の墓へ納めるため、歌帆は山口県柳井市の沖に浮かぶ小さな島「栗平島」へ向かった。
本土から渡れるのは、朝と夕方の船だけ。橋のないその島には、母が若いころ暮らしていた家と、歌帆の知らない親戚たちが待っていた。
潮の音が聞こえる民宿、柑橘の香る細い路地、海を見下ろす墓地。
島で過ごすうちに、歌帆は少しずつ母の足跡を辿っていく。古い家に残されていた日記には、母が言えないまま抱えてきた後悔と、歌帆へ伝えたかった想いが綴られていた。
やがて歌帆は、自分の記憶から抜け落ちていた幼い日の約束にたどり着く。
「あの島で、また会おうね」
その言葉を交わした相手は、誰だったのか。
母が守ろうとしたものは、何だったのか。
喪失から始まった夏の終わり、歌帆はこの島に、もう一度帰りたいと思える理由を見つける。
瀬戸内の小さな島で、失われた家族の名前を取り戻す物語。
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